さよなら江古田サッドカフェ
何かを失うとき、大きなことが起こるとき。そういった物事はいつも無礼なほど唐突で、あまりに突然であるがゆえに、妙に浮き足立ってしまう。「あれ、なぜ私はこんなときにワクワク、そわそわしているのだ?」と、よくわからない気持ちになることが多々ある。
2017年3月11日、東京・江古田の名店「サッドカフェ」が閉店した。灯りのついたロウソクを並火けしで消すように、小声で閉店した。最後の夜もいつもと同じように、店内は暗く、料理は美味しかった。
別段、サッドカフェの誰かと仲が良かったわけではない。ただ、あの店の暗さや静けさ、距離感に救われた夜がいくつもあった。沈み込むようにタリスカーを飲んでタバコを吸うのが好きだった。0時を過ぎると飲み屋の選択肢が少なくなる江古田において、落ち着いてちゃんとした酒を飲めるサッドカフェは貴重な「大正解」だった。
特にこれといって何もせず19時になってしまった日。レコード屋で時間を潰し、近所に住んでいる友だちと駅前で待ち合わせをする。とんでもなく酒の濃い串焼き屋で腹を満たして、日付が変わったころに歩きだす。曲がり角から顔を出し、開いているシャッターに安心し、黒いドアを右手で引く。サッドカフェがあったころ、夜はさらりと軽やかで、木綿が飛ぶようにふわふわしていた。
さよなら、サッドカフェ。
閉店のお知らせ
長年ご愛顧いただいておりましたが、体調不良により営業が難しい状況となりました。
申し訳ございませんが3月11日をもって 閉店いたします。改めましてこれまでのお引き立てに感謝を申し上げるとともに、みなさまのご健康をお祈りいたします。
ありがとうございました。
— SAD CAFE (@rn_sad) 2017年3月11日
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なんとその後、野方に昼のお店として再オープンしたとのこと!!!行きたいなぁ。
少し明るくなった? pic.twitter.com/zzCBX2tvzn
— SAD CAFE (@rn_sad) April 23, 2018
ディスカッション
コメント一覧
さよなら、サッドカフェ。行ったことは無いけれど。
今回もシビれる文章ありがとうございます。
私が出版社の編集とかやってたら「小説書いてみませんか」とそそのかしたいところです!
ekoさんありがとうございます!何かを言っているようで何も言ってない駄エッセイ集出したいですね〜!温泉旅館に缶詰になってさぎょうしたいです!
北海道在住の者です。27年前、カミサンと初めてデートした店であり、思い出がいっぱい詰まっています。先日、練馬の義母の三回忌で上京したのですが、帰る間際、羽田に向かう電車の中で「サッドカフェ、まだやってるかな?今度来たら行ってみようね。」と話していました。検索したところ、貴ブログにて閉店を知りました。とても寂しいです。終わり方がサッドカフェらしく、グッときました。思い出は思い出のまま。歳を重ねると別れが増えます。思い出を大切にします。さよなら、そしてありがとう、サッドカフェ。
freeways65さん
コメントありがとうございます。なんと、その後、野方に再オープンしたとのことで…!同じマスターがやっていますので、もし東京に行かれる際はぜひ!
https://twitter.com/rn_sad/status/988231643994324993
返信いただいたこと、3年近く経って気づきました(笑)
情報ありがとうございます。感染症のこともあり、練馬の両親の年季法要へも行けぬことがありました。次回上京の折は是非とも野方のサッドカフェへ行き、マスターにご挨拶できればと思います。教えてくださり、ありがとうございました。
寂しすぎてしにそうです。
野方に新しくオープンしたとはいえ、江古田のあの場所、あの雰囲気がなくなってしまったのは、本当に寂しいですね…。