歌詞を考えるときに気をつけたいこと

バンド

10年間、バンドで歌を歌ったり、曲や歌詞を書いたりしてきた。大学生の頃は1週間で2曲作れるくらい多作だったのだが、ここ数年は忙しかったりスランプだったりで、なかなか新曲に取り組めない。それでも歌詞を書くのは楽しいので、チョロチョロと書いているのだが、せっかくなので自分が歌詞を考えるときに気をつけることをまとめてみようと思う。スランプになったら読み返そう。

と思って書き始めたら、だんだん精神論に偏っていったので、それだけまとめて記事にした。方法論はまた今度。っていうか精神論が全てだ!書きたいように書け!やりたいようにやれ!

伝えたいことを「全て」「正しく」「詳細に」伝えようとしない

The PoliceのStingですら歌詞の内容を正しく伝えることは出来ない

The Policeというバンドのヒット曲に"Every breath you take"(邦題:見つめていたい)という曲がある。

一般的には恋人を見守るラブラブな甘い歌詞で、ラブソングとして認知されている。だが、作詞者であるスティングは全く違った意味合いでこの曲を歌っていた。

以前、あるインタヴューで、「見つめていたい」の作者でもあるスティング自身が「あの曲はある種のストーカー的心理を歌ったもの。歌詞の内容を勘違いして結婚式なんかで流す人もいるみたいだが、それはそれで面白いと思う」というようなことを語っているのを読んで、仰天すると同時に、「英語圏の人でも歌詞の内容を勘違いすることがある」ということを知った。

 

ポリス 「見つめていたい」 – 花の絵

変な言い方だが、歌詞の内容を歌詞だけで伝えることは難しい。というか、100%同じ心情・景色を想像させるのは無理だ。それを理解した上でスティングも「それはそれで面白い」と発言している。

音のマジックと聴き手のイマジネーションに任せよう

であれば、受け取り手のイマジネーションに任せよう。例えば「月明かり」という表現ひとつとっても、聴く人ひとりひとり思い浮かべるものは違う。逆に、音楽の力を使って想像力を刺激し、一番ハマるものを思い浮かべてもらったほうがいい。

ミッシェルガンエレファントの頃のチバなんて、相当好き勝手に単語を並べていたが、なにせ声と曲がかっこいいので感動してしまう。言葉に音のマジックがかかった好例だ。ミッシェル最高だ。

テキトーに書いてもOK。自分の言葉で書いていれば。

歌詞に全くこだわりをもっていないことで有名なのが元OASISのノエル・ギャラガー。彼は「ファーストアルバムの一曲目"Rock’N’Roll Star"で言いたいことを言い切った」と豪語しており、その他の歌詞についてテーマは決めているが特に深い意味はないと話している。超名曲"Don’t look back in anger"のサビでさえも、リアム・ギャラガーの聞き間違えをそのまま正式に採用している。

そんな歌詞テキトー人間、ノエル・ギャラガーがOASISで書いた歌詞だが、一貫して同じ哲学に基づいて書かれている。だから、バンドのイメージがブレることはない。自分の考えは自分の人生経験からしか語れない。人間性は隠そうとしても隠せない。そしてそれは、言葉尻やちょっとした感性に表れる。だから、歌詞をテキトーに書いても、自分の言葉で書いている限りは、自分らしさがどこかににじみ出る。

自分が書きたいように書く

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photo by Frederick Homes for Sale

一番大事なのはここだと思う。書きたいように書いて、歌いたいように歌うこと。

「一聴して何が言いたいか伝わるような歌詞」とか、「共感を得られるような歌詞」っていうのはもちろん大事。だけど、まだ売れていないミュージシャンや一般受けしない音楽をやっているバンドが大衆性を求めるのは全然意味がない。

それよりは「この歌詞ってどういう意味なの?」って聞かれた時にきちんと説明できること、そこで共感を得たり意図を伝えられることのほうが大事に思える。そういう場を持ったり、オープンにしていく姿勢も重要。(自分もなかなかできていない。)

それさえできていれば、書きたいことを書きまくって歌いたいように歌えばいい。まずは煮えたぎった思いを、原液のまま流し込む。とりあえずはやりたい放題やって、後から整えればいい。(たまに信頼できる誰かの意見も聞き入れながら)

弱気な店主のラーメンより、頑固オヤジのラーメンが食べたい。

頑固オヤジのラーメン的な歌詞の曲がこちら

なんか偉そうに色々語ってしまった。自分自身も実践できていないことが多いのに。これから頑張るってことで、アレしてもらえませんかねェ〜〜!そんな、これからに期待してほしい系ボーイの書いた歌詞はコレです。

taicoto orient “Decoded"

都について数年後、ひとしきり悩み終えた後
彼らについて考える 割れるように笑う友のこと

おそらくは知らぬだろう
流れ星がかけた夜
一羽、鳥が溶けたこと
一羽、悲しみの中、溶けたこと
しかしそれでいいと今、今ならそう思える
どちらにせよ私もそう多くを知るわけじゃない

荷物を下ろして数日後、ひとしきり眠り終えた後
日々の暮らしと引換えに、賢者の黄金を手に入れる

間近で眺めると、むしろ錆や手垢が目立つ
無数に細い傷があり、ところどころが歪んでいる
しかしそれでいいと今、今ならそう思える
どちらにせよ私も、そう綺麗なものじゃない

よだかが笑う 文字を捨て去る
星になれない夜は 月として遊べ!
閃光の後、紅茶をいれる
違う傘に入って雨宿り

そして静かに閉じる日々を集め
慟哭の暗号を全て空に返していくだけ

この記事を書いた人
七里ガ浜で笑う筆者

Mediumbuddha

1989年、北海道札幌市生まれのインディ音楽ナイスガイ。

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Twitter→→→@fuloba

2018年10月31日バンド