マラケシュのメディナを歩きつくして、ミントティーとモロッカンワインを飲む
2012/02/14 – Marrakech, Morocco
【2012年2月12日為替レート】1 MAD = 9.20185 JPY
モロッコ4日目は、マラケシュの旧市街でゆっくり過ごすことにした。翌日からはサハラ砂漠に向かい、その足で北側の街を回って帰りの飛行機にのるため、今日が最後のマラケシュ滞在となる。
4日目・朝
宿で食べ、広場で飲む朝食
朝ごはんはRiad House13で用意してもらう。
メインは甘めのホブス(モロッコパン)とオリーブオイルやジャム。付け合せにチーズ、ゆで卵、シナモンのかかったフレッシュなオレンジだ。
明日のチェックアウトに向けて軽く部屋の荷物を整理して、街歩きへ。
まずはジャマエルフナ広場にいってオレンジジュースを飲む。甘くて、冷たくて、果肉がたっぷりはいっていて。一度味わえば、もうあのオレンジジュースなしでは一日をはじめられない。
ジャマエルフナ広場でオレンジジュースを飲んだ。空腹感や眠気でドロッとした身体に、柑橘のきらめきが駆け抜ける。午前8時に屋台を独り占めして飲むあの液体が、世界で1番美しい。
ラシードをさがして
メディナをあちこち歩いて、静かな迷い道を堪能する。「カウボーイビバップ 天国の扉」でラシードとスパイクが歩いていたモロッカンストリートのような、細く美しい路地が続く。
メディナの分かれ道には、言いしれぬ引力と圧がある。その入口に立てば、道の奥に差し込む光から視線を外すことができなくなり、呼吸が止まる。
おおモロッコジョーク、おおメディナ
裏路地から、にぎやかなスークへ移動する。軽やかにからかってくる若者や、スパイシーな日本語でジョークを飛ばしてくる老人たち。マラケシュに慣れてきたこともあり、人々を含めたメディナの起伏を楽しめるようになった。
「おい、アジア人、足の裏!」と遠くから呼びかけられる。「いいから足の裏を見ろよ!」足の裏を見てみる。「反対の足だ!ガムを踏んだぞ!」逆の足を見てみる。すると、近くにいた別の若者が笑いながら「He’s kidding you.(からかってるだけだよ)」。
(中略)
路地でオセロをやっていた老人たちに、「ジャパン?」といきなり話しかけられたこともあった。イエス、と答えると、全員がお互いを指さして「コイツ、ドロボー!ドロボー!」と日本語で叫ぶ。
4日目・昼
セボンでブニンなケバブだぜ
昼時にジャマエルフナ広場の周りを歩いていると、ケバブがくるくると回っているのが目に入った。ちょうど腹も減っていたし、価格も安かったので外の席に座る。目つきが鋭く、体の大きいレディがオーダーを取りに来てくれた。英語は通じないが、メニューを指さして注文をする。
ケバブサンドとポテトのセットだ。ケチャップ、マスタード、サワークリームと三種のソースがついていて、ポテトの味を変えながら楽しめるようになっている。
他のテーブルを片づけ終えたレディがこちらに近づいてきて、「C’est bon?」と言った。あいかわらず鋭い目つきをしていたので何事かと思ったが、こちらをじっと見て親指を立てている。どうやら、フランス語で「美味いか?」と聞いてくれたらしい。数秒して意図に気づき、アラブ語で「Bneen!(美味しいよ!)」と返す。彼女は鋭い目つきのままニヤリと笑い、カウンターの中に帰っていった。
飲んで、ベルベルウィスキー
午後は、ジャマエルフナ広場に面したカフェでミントティーを飲みながらゆったりとすることにした。ホテルのようなつくりの素敵な館で、ちょっと緊張してしまう。
緑茶をベースに大量のフレッシュミントと砂糖を入れるモロッコのミントティーは、日本で想像される「ミントティー」とは全く別ものだ。
「ベルベルウィスキー」とも称されるこのお茶は表情が緩むほど甘く、疲れた身体に心地よく染み込んでいった。2月の涼しい風を浴びながら、なにもせずただ往来を眺める。
4日目・夜
大阪のおばちゃん
この日の夜はRiad House13で紹介してもらった、予約制の個人レストランを営んでいる「大阪のおばちゃん」という方のお宅へお邪魔する。日が暮れる頃に待ち合わせ場所で待っていると、小柄だが背筋の伸びている、シャキッとした印象の女性が現れた。
「市場の連中も私が日本人だからいちいちぼったくってくるんです」「フランス語でこっちに住んでるからって言って、ちょっとやりとりしてようやく現地人と同じ価格に下げてもらって」「毎朝そんなんやってたら、まあ疲れますわ」。フランス人の夫とモロッコに引っ越してきたという大阪のおばちゃんのトークは軽妙で、あっという間に彼女の自宅に到着した。
客間の天井は高く、鉄格子でスペースが区切られていた。薪から立ち上る炎で、部屋は快適に暖められている。
Riadとはまた違ったモロッコの生活空間がどこか落ち着かず、料理がくるまでなんとなく部屋の中をほてほてと歩きまわっていた。
メクネスのモロッカンワイン
メニューはゴートチーズのサラダ、ウサギ肉のトマト煮込みとポテト、ホブス。他にも数品あったと記憶しているが、残念ながら写真が残っていない。
モロッコのトマトは新鮮で甘く、筋繊維の細かいウサギの肉とよくマッチしていた。
大阪のおばちゃんが「モロッコのワインでも飲んでみます?」と出してくれたのが、「DOMAINE DE SAHARI」。イスラム教国であり、基本的には飲酒をしないモロッコ人だが、「イスラム飲酒紀行(高野秀行著)」に書かれているように、作るべきところでは作られているらしい。
生産されているのはフェズの南側、メクネスという地域らしい。もし今度モロッコに行く機会があれば、ワイナリーや生産者を訪ねてみたい。
ブドウ畑は、モロッコ・アトラス山麓の北部のメクネス南部の標高600mに拡がっているそうです。
といっても、なんのコッチャ、よくわかりませんが、日照量に富み、昼夜の寒暖の差が激しい気候に恵まれて、
エレガントなフランス・スタイルのワインを生み出すことが出来るんだそうです。
彼女のファティマの手
調理が終わったあと、大阪のおばちゃんは我々の隣りに座りいろいろなことを話してくれた。
近くに住んでいる子どもたちのポイ捨てや立ちションを、毎朝ガミガミ叱ることで辞めさせたこと。2010年ごろから田舎出身の、なんとしても金を稼ごうという若者が増えて少し治安が悪くなっていること。その頃から荷馬車よりも原付バイクのほうが増えてしまってメディナが歩きにくくなったこと。この街に長く住む彼女の話は、少しの滞在でマラケシュとモロッコを理解し始めた自分にとって、すごく刺激的だった。
帰り際、彼女はウオークインクローゼットのアクセサリーのなかから、どれでも好きなもの1つ持っていっていいわ、と言ってくれた。そのときにもらった「ファティマの手」は、6年経ったいまでも鍵束の中から邪視を防ぎ続けてくれている。
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