ラーメン屋でチャーシュー丼を食べることについて(人間失格イン麺屋)
恥の多い生涯を送って来ました。 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです(わたしはかつて、ラーメン屋でチャーシュー丼だけを注文し食べていました。しかし、ここ千幾日ほどは、その食券パネルに指を近づけることすらしておりません)。
人並みに、ラーメンが好きだ。
大盛りを食べる。ライスを追加注文して、ほぐほぐと食べる。成人男性なりに食べる。昼にも夜にも食べる。明け方にも食べる。うまい、うまい、と食べる。スープをすする。水をおかずに、スープをすする。麺を食べ終わった後、酢や辛子味噌で調和を乱して遊ぶ。しかるのち、責任をもってスープをすする。
二郎系なら、ヤサイニンニクとコールする。家系なら、ぜんぶ普通でオーダーする。つけ麺なら、追加料金無しで一番たくさん食べられる麺量を選ぶ。中華そば屋では、普通の「らーめん」を頼む。餃子といっしょに頼む。
しかしながら、知らなかった。どうやら、チャーシュー丼って、ラーメンといっしょに注文しなきゃいけないみたいなのだ。知らなかった、どうりで安いわけだ。てっきり、あんなに脂っこいんだから、スタンドアローンの料理だろうと思っていた。そういうわけで、チャーシュー丼だけ頼んだことが幾度かあった。そりゃあ、俺だってラーメン屋に入ってライスだけを頼んだりはしない。でも、あんなに味が濃くてヘヴィーなものを、ラーメンといっしょに食べるという発想がなかった。あれは、バーでソフトドリンクを飲むようなものなのだろうと思っていた。「そういう人もいる」というものなのだと。
数年前、カフェで「ラーメン屋でチャーシュー丼だけ頼むアホがいるんだって!」という会話を耳にして、自分がお店に対してイレギュラーな存在であることを初めて認識した。きゃあ、そうだったのか。みんな、そんなにメシ食べられるのかよ。丼にもラーメンにもチャーシュー入ってるわけでしょ。どういうペースで食べてるの。俺以外にもサイドメニュー野郎がいるのかな。ラーメン屋での正しいふるまいってのは、どこで学べばいいんだろう。そうして3分だけ思い悩んで、まあいいかと立ち直った。
だって、誰になんと言われようとチャーシュー丼だけ注文するくらいが、幸せにはちょうどいい。
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