【散歩・夕食・通電】北海道胆振東部地震の記録(2018年9月7日③)
2018年9月7日。
19:00ごろ、仮眠から起床。祖母は体調がすぐれないといって、早々に寝てしまった。
寝床から抜け出して、星を見あげるついでに出あるいてみる。携帯の電波が入る陸橋に行くと、遠くの街に明かりがついているのが見えた。くっきりと線引されたように明暗が別れていて、すぐそこまで電気が来ていることが視覚的にわかり、とても心地が良かった。
じっと遠くの街灯を見つめていた女性と会話をした。
「あそこの街は電気が通ってるのね!」「明かりを見たら嬉しくなっちゃって、つい立ち止まっちゃったの。」「電気があるって素晴らしいことなのね。」「うちに東京から来たお客さんが泊まっていたんだけど、朝早くに新千歳空港のチケットカウンターに行くんだって出て行っちゃったの。「無事に帰れたかしら。家についたら連絡をくれると思うんだけど。」「うちはぜんぜん揺れなかったけど、坂の下の家に住んでいる友達の家はひどいみたいよ。」「ここらへんは地盤が硬いのかしら。」
この街全体が真っ暗だった夜を、遠くで光が揺れる光景をみた者同士でしか分かち合えない連帯感があった。
電気がつくのも時間の問題だと思い、ガスの消費量が多い料理をする。トマトを煮込んで、スパゲッティを茹でる。塩がきいた、おいしいソースができあがった。パルメザンチーズをたっぷりかけて、暗いキッチンでおおいに食べる。
ローズ・シュナイダーマンの演説に、「労働者はパンが必要ですが、わたしたちの生活にはバラも必要です」という言葉がある。被災している地域や、停電している我々にとってもそれは同じことで、可能なかぎり美味しい食事をしないと、干からびてしまうのだ。「非常時だから、我慢する」だけでは、とてもじゃないが耐えることはできない。
21:00ごろ、電気が通電した。家の窓から街灯のオレンジ色の明かりを見つけたときの高揚感は、言葉にできないほどだった。喜び勇んでブレーカーを上げ、祖母とハグをする。ひとまず、これで一段落だ。
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