マルチ商法と藪の中
小学生の頃から仲良くしてもらっている地元の先輩は、マルチ商法にハマっていた。いつのまにやらハマっていた。親友の姉だった。
新宿のカフェで転職の相談をしていたつもりが、いかにサラリーマン的な稼ぎ方をせずに年収をブチ上げていくかの話になっていた。どうやら、うまくやれば豪邸を買ったり、でかいホテルでパーティができるらしい。
まったく興味がなかったので「まあ、家帰って調べてみます」と伝えると、「ネットとかで調べても悪い噂しか出てこない思うけど、」なんたらかんたらと言われた。
なんだか、それが悲しくて言い返してしまった。「芥川龍之介の『藪の中』って話好きなんですけど、いろんな人が一つの事件について証言する話なんですけど、結局、本当のことなんて誰にもわかんないんですよ。」言っていて何だかこんがらがってきた。「森見登美彦が『新釈 走れメロス』でリメイクしてて、そっちの方が読みやすいんですけど」先輩もきょとんとしている。「何もかも、『藪の中』なんですよ。他人の、ましてやネットの噂なんかどうでもいいんです。」ただ、いちいちネットに転がってる悪い噂を気にする先輩が悲しかった。
「藪といえば」先輩は地元の話をした。「●●病院の××先生って、ヤブ医者だったよね。」
その病院はもう敷地を北海道新聞に売ってしまって、隣接していた先生の家だけが残っています。向かいのコンビニは、デイケアセンターになりました。
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